「ねぇ、純子ちゃーん。俺ってこのあと何もないよね?」
「なんもないっていうか、理央くんがオフがいいって言うから!」
「わかったわかった。ありがと」
柏木くんはマネージャーらしき女の人に笑いかけると、自然な流れで私の手を取って。
「じゃ、行こうか」
「ちょ、えっ!?」
強引にそのまま手を引かれ、否応なしにそのままスタジオの外へ連れ出される私。
「ちょっと柏木くん!?私、雨宮さんになにも…!!!」
「えー?雨宮さんの"なんでもない"くせに、報告なんているの?」
「っ、」
ちらりと振り返った柏木くんは悪戯に笑って、まるで私の気持ちを見透かしているみたい。
結局入館証すらぶら下げたまま連れ出された私が足を止めたのは、スタジオから少し離れた街中だった。