怪しげに笑う柏木くんの目線の先には雨宮さん、と
「…睦月さん」
いつの間にか席を外していた睦月さんはこれまたいつの間にか戻ってきていて、雨宮さんのマネージャーである睦月さんが横に並ぶところなんて今まで何回も見てきてるのに。
「あの二人、いつも仲良いよね」
スタジオの隅っこで睦月さんの腰に回された雨宮さんの長い腕。
うつむき加減の睦月さんの顔をのぞき込むようにして折り曲げられたしなやかな腰。
…ねぇ、雨宮さん。
こんな角度、絶対ダメです。
こんなの、週刊誌に撮られでもしたらどうするんですか。
私だからいいものを、こんな。
こんな、キスしてるみたいな、体勢
絶対絶対、だめです。
「…泣かないんだ?」
「…なきません」
「なんで?雨宮さんのこと好きなんでしょ?」
柏木くんはエスパーかなにか?
それとも私が分かりやすいだけかな?
どっちだっていいけれど、今は。
「…わたしは、雨宮さんのなんでもないので」
泣くとか泣かないとか、それ以前の問題が私の心の奥底にズブズブと一人で沈んでいく。