「ねーねー、彩羽ちゃん」
長い撮影の合間合間。
休憩になる度にまるでわんちゃんみたいに脇目も振らず私のところに駆け寄ってくる柏木くん。
年上なのに威圧感なんてものまるでなくて、人の懐に入るのがうまい人だなと思う。
一度は雨宮さんが間に入ってくれたものの、根負けして名前を教えてしまった私を見て呆れてしまったのか、今では隣に座るどころかこっちを見向きもしてくれなくて。
スタッフさんやカメラマンさんと写真の確認をしている横顔を遠目で眺める私の心は、ドン底。
でも、そんなことお構い無しに話しかけてくる柏木くんを無視することなんてできず。
「ねーねー、学校どこ?俺そこの藤原!芸能科あるとこ」
「あの、芸能人なんですしそんな初対面の相手に学校名を教えるのは…」
「いーのいーの。彩羽ちゃん悪用とかしなさそうだし。ね?」
ね?って……こんな至近距離でウィンクされたことないよ!
こっちが恥ずかしくなって思わず目をそらすと、あーぁ、とつまらなさそうな声。
「なんでこんな可愛い子が雨宮さんなんかに捕まっちゃうかなぁ」
「つ、捕まってなんか…!」
「いいよ、嘘つかなくて。でもさぁ、雨宮さんはどうなんだろーね?」
「え?」