「家主より先に扉をくぐるなんて何様だお前は」




そしてその後ろに続く雨宮さんは小さくため息をついて頭をかく。




なんだ、今日打ち合わせの日かぁ。




しょんぼりと落ち込む気持ちを隠しながらふたりをリビングに招き入れた私は、お仕事の邪魔にならないようにと再びカレーの元へと舞い戻った。




ぐつぐつと煮詰まったカレーのいい匂いが部屋に充満してお腹がなる。


早く雨宮さんと食べたいなぁ、なんて思いながら口を尖らせていると背後に気配を感じて。




「うわ、おいしそうなカレー」



「え、わ、睦月さん」



「もう、お腹減っちゃうわよ。こんな匂いかいでたら」




「あ、良かったらご一緒しませんか?多めに作ったので!」




「えっ、いいの?」



相当お腹が減っていたのか、ぱっと目を輝かせる睦月さん。


本音を言えば雨宮さん2人で食べたかったけれど、食卓を囲む人数は多い方が楽しいし。




「すぐよそうので待っててください!あ、ご飯はどのくら」




「アホ。やらんでいい」




お皿にご飯を盛り付けようと炊飯器の蓋を開けた私の手からしゃもじが奪い去られる。




「お前に食わせる飯はない。腹が減ったならさっさと打ち合わせ済ませて帰れ」




「なによ!意地悪!」




「そうですよ雨宮さん!本当に沢山作ってあるので大丈夫です!」




「沢山作ってあるのならその分も俺が食う」



「え」



「お前の飯はうまいからいくらあっても足りんくらいだと言っている。それを睦月なんぞに分け与えるなんて以ての外だ」




私の手からかっさらったしゃもじで自らお皿にご飯とカレーをよそい、そのまま食卓につく雨宮さん。