「はーぁ」
無事文化祭を終えたはずの私は、家でカレーを煮込みながら深いため息をこぼした。
すき。私は雨宮さんを、すき。
ということは、これはもしかして片思いというやつなのでは?
考えてみれば初めてのことで、どうしたらいいのかわからない。
ぐるぐると鍋の中の具材を掻き回していると、私の頭の中もぐるぐる、ぐるぐる。
よく片思いが一番楽しいだなんて聞くけれど、本当にそうなのかな。
確かになんてことない言葉で嬉しくなるし、後ろ姿だけできゅんってなるけれど、きっとそれだけじゃいられない。
その証拠に、睦月さんの存在が頭から離れない。
仕事とはいえ、毎日行動を共にしている睦月さんが気になって。
雨宮さんのスマホの着信履歴を埋める睦月さんの名前が羨ましくて。
こうして私がカレーを煮込んでいる間にも、2人のは笑いながら話してるのかな、なんて。
カレーみたいにドロドロした気持ちが溢れてきて止まらなくて、無意識のうちに眉が下がる。
雨宮さんに、会いたいなぁ。
早く帰ってきて、一緒にご飯を食べたい。
ちらりと時計に目をやれば、いつもならもう帰ってきても良さそうな時間だ。
はやく、はやく。
一人でそわそわしていると、丁度玄関の扉が開く音がして。
「お、おかえりなさいっ!」
でも、慌てて出迎えに走った私と目が合ったのは、雨宮さんではなく。
「あら、久しぶりね。お邪魔するわよ」
「お久しぶり、です…」
細い腕に絡む腕時計から大人の色気をにじませる、睦月さん。