それからはあっという間だった。
1日1日が目まぐるしく過ぎていき、気付けば当日。
「あとはうちらに任せて行ってきなよ!」
「頑張ってね久世さんっ」
「いってら彩羽〜」
うちのクラスは模擬店でたこ焼きを焼いている。
クラスをいくつかのグループにわけ、シフトを組んで店番をしているのだけれど。
「ごめんね、ではお言葉に甘えて…」
店番の最中、私は1人頭を下げてテントを抜け出す。
やばい。超ハードスケジュール。
まさか模擬店のシフトと、演劇部の本番が被っちゃうなんて予想外だった。
お昼時の一番大変な時間なのに笑顔で送り出してくれた美月たちクラスメイトに感謝しながら、演劇部の部室まで急ぐ。
走ってるのと本番への緊張で口の中がカラカラだけど、そんなこと気にしてる場合じゃない。
「お、きたきた」
息を切らせて部室のドアを開けると、待ってましたと言わんばかりに圭吾先輩が駆け寄ってきて。
「どう?緊張してる?」
「し、しないわけないじゃないですか」
「はは。そうだよね」
衣装の浴衣を身にまとった圭吾先輩はいつもと雰囲気が違って少しどきりとしたけれど、向けられる笑顔はいつも通りで安心する。