食べ終わった食器を洗っていると、雨宮さんが私に聞いてきて。
「来週の金曜日です」
「もうすぐじゃないか。その後調子はどうなんだ」
「圭吾先輩には良くなったって言われましたけど、自分ではよく分からないです…」
「む。教え甲斐のないやつだな」
不満そうに顔をしかめる雨宮さん。
「見に行けたらいいんだが、生憎その日は仕事でな」
「いやいや、来れたとしても来ないでくださいよ」
「なんでだ」
「いくら変装しても、万が一バレた時大パニックになっちゃいますから」
雨宮さんは変装していても、オーラがすごい。
文化祭なんてタダでさえみんな浮かれてるのに、そこに人気俳優が現れたもんならもうそれどころではないだろう。
「だから、大丈夫です。きっと成功させてみせますから、雨宮さんはお仕事頑張ってくださいね」
それに、雨宮さんに見られてたら緊張して出来ることも出来なくなっちゃうよ。
見に来てほしいような気もするけど、やっぱり恥ずかしい気持ちの方が勝ってしまって。
まるで、小学生みたい。
学芸会を親に見てほしいような、ほしくないような、そんな気持ちと似ている。
「まぁ、せいぜい頑張るんだな」
「はい。言われずとも!」
ぐっと親指をたてると、ふわりと雨宮さんの顔が綻ぶ。
「俺がみてやったんだ。絶対上手くいく」
「ふふ、そうですね」
自信満々の雨宮さんを見ていると、こっちにまで移りそう。
成功すると、いいな。