そんなこの瞬間が、どうしてかこんなにも嬉しい。





当たり前になったこの日々が、こんなにも温かい。





お父さんやお母さんに抱く気持ちとはどこか違う感情。





この気持ちに名前をつけるなら、きっと。





「…睦月か」





そんなゆるゆるな雰囲気で仲直りモードになっていると、着信を知らせる雨宮さんのスマホの音でハッとさせられた。




「悪い。先に食っててくれ」





「あ、はい」







スマホを耳に当て、リビングから出ていく雨宮さんの背中。





きっと、お仕事の話。




わかってる、けど。





「……」





こんな広いリビングに置き去りにされて食べるご飯は、少し喉につかえて。





"私、好きよ。綾のこと。あなた何かよりずっと前からね"





私を見据えるダークブラウンの瞳を思い出して、唇を噛んだ。




睦月さんは、雨宮さんが好き。




邪魔をするな、と言われたけれど。





「……邪魔なんて、できません」




心配しなくても、邪魔のしかたすら分からないですから。




高校の同級生だという2人には、私の知らない共通の思い出があったりして。




私の知らないことを、きっと沢山共有している。



時にはお酒を飲みながら思い出話に花を咲かせることだってあるはず。