「指導って、もしかしてあの時のお兄さん?」
「あ、はい。大学生のときに演劇サークル?みたいなのに入ってたみたいで、はは」
我ながら適当すぎる嘘に苦笑いがこぼれた。
「じゃあよっぽど上手いんだろうなぁ。素人の彩羽ちゃんにあんな顔させられるようにするんだもん」
「確かに上手は上手でしたけど…」
まあ、なんて言ってもプロですからね。
プロだから、それはそれはお上手で。
勘違いするほどに、お上手で。
雨宮さんの手のひらの上でころころと転がされるだけの私。
きっと、暇つぶしのオモチャには丁度いいくらいの私。
オモチャでも女の子なんですからね、もう。
もう少し思春期の心を大切にして欲しい、というか。
じゃないと本当に勘違いしてしまいそうで。
手遅れになってしまいそうで、怖いんです。