圭吾先輩は、優しい。
お詫びという形で演劇部にお世話になっているにも関わらず、私の居心地が悪くないようにと休憩時間には必ず話しかけてくれて。
帰り道も、こうして部員の輪から一人外れて私の隣で歩幅を合わせてくれる。
雨宮さんがあんな無礼を働いたあとでも、気にしないで、と笑って送り届けてくれて。
「仮に何かあっても、相手役の俺がフォローするよ。任せといて」
優しく微笑みかけてくれる姿が、頼もしい。
「でも彩羽ちゃん本当に演技がリアルになってきたよね?今日とかちょっとドキッとしたもん」
「そ、そんな」
「もしかして、好きな人でもできた?」
どき。
予期せぬ質問に顔がかっと熱くなって、どうしてか雨宮さんの顔が浮かんだ。
「あれ〜?もしかして当たり?」
「ち、違います!!ただ、ちょっとその道の人にご指導をして頂いただけで…」
好きとか、そういうのじゃない。
ただあんなこと初めてで、びっくりしただけ。
突然あんなことされたら、きっと誰でもこうなるはず。
雨宮さんだから、じゃない。はず。