映画の撮影にバラエティ番組の収録、雑誌のインタビューと撮影に夜はまた別のバラエティの生放送。



ラジオの収録に、睦月との明日の打ち合わせ。




「はぁ」




全て終わる頃には日を回っていて、家に着いた頃には深夜。




ソファに腰を沈めてため息を一つ吐くも、そこに小娘の姿は勿論ない。




別に、家に帰ってきて出迎えてくれるやつがいないのは今に始まったことではないが。





「……」




缶ビール片手に、そのまま小娘の部屋へと足を踏み入れる。




珍しく部屋の明かりを付けっぱなしで寝息を立てているところを見ると、もしかして待っていたのか。





「…ん、」





いつもならどんなに暑くても布団を肩までかぶってミノムシみたいに寝ているくせに、今日はなんだ。





「アホ」





ベッドからずり落ちそうになっている布団をふわりと小娘にかけてやり、そのままベッドの横へとしゃがみ込む。





白い肌に影を落とす、長い睫毛。



淡い桃色の唇は少し口角が上がっていて、愛らしい。




小振りだが、形の良い鼻。化粧なんてしたことないといいながら、いつも染めたように色付いている頬は、触れたらどうなるのか。




「…………」





気になって、ひとつまみ。





「んん、む」





やっぱり、餅みたいによく伸びる。




少し顔を顰めたので、しまったと思い手を離したが結局そのまますやすやと寝息を立てる様子にホッとした。





おかえり、も




ただいま、もなかったこの家に






ある日突然やってきた犬。






別に一人が寂しかった訳じゃない。






元々一人でいることは苦ではないし、むしろその方が気楽で。




そうやってこの先もずっと生きていくのだと思っていたけれど。