「お母さん、今日から海外出張だから」
「……へ?」
本日、9月1日。
高校生活最初の夏休みは昨日で終わりを告げ、今日は始業式。
久しぶりに制服に袖を通し、いつも通りキッチンで朝食の準備をしていると、ピンクのどデカイスーツケースを引きずったお母さんがサラリとそんなことを言う、午前7時32分。
「何それ、聞いてないよ?」
「そうねぇ、だって今言ったし。わあ、今日も美味しそう」
いただきます、と手を合わせて、さっき焼けたばかりのトーストを口に運ぶお母さん。
サクッといい音がして、よし、今日も我ながら絶妙な焼き加減…ってそうじゃなくて。