「羽見。」


学校へ戻り、ミーティングと報告会をした後の帰り道。

たまたま七宮くんと鉢合わせた。


「お前、覚えてたんだな、炎の魂。」


「…うん。届いてたんだ、よかった。」


「嬉しかったよ。羽見の声が聞こえた途端、打てるって思ったんだ。」

そう言って七宮くんは遠くを見た。


「…本当にかっこよかったよ、最後のホームラン。…なんか、また泣けてきた…ごめんっ…」


七宮くんのホームランを思い出すだけで涙が溢れてきた。


「おい、泣くなって…。ほんと昔から泣き虫なとこ、変わんねぇな。」

そう言って頭を撫でてくれた。


だって、七宮くんの夢が。

私の夢の一部でもあった七宮くんの夢が叶ったんだよ。


「…夢が叶って本当に嬉しい。悔いのない試合にするよ。」


「うん。」


「…それと、甲子園が終わった後に言いたいことがあるから、それだけ覚えてろ」


そう言ってそっぽを向いた。



言いたいことって…

まさか、

まさか…ね。


頬がほんのりと赤くなる。


七宮くんを見ると、七宮くんは私のことをじっと見ていた。

「お前、かわいいわ…」


えっ…。

かわいい。



ぼっ。


さらに頬が熱くなった。


ジョークだったとしても、それは反則。


こんなのずるいよ…。


「甲子園、一緒に頑張ろうね。……七宮。」


「…あっ、呼び捨て」

「…いいじゃんか、別に…。」

コツン。

私たちは拳を合わせた。









私たちの夏はまだ、始まったばかり。



夏はまだまだこれからです。