ぽん。


誰かが私の肩を軽く叩いた。

振り向くと、野球部の後輩が私をじっと見ていた。


「先輩は、"炎の魂"って曲を知ってますか?」


炎の魂…。その曲は、私と七宮くんが昔に聞き込んだ思い出の曲。


私はこくんと頷いた。


「七宮先輩は、あの曲が大好きなんすよ。試合前はあの曲を聴いてモチベ上げているんす。俺、中学から先輩と一緒っすけど、聞いてない日がないくらいっすよ。特にサビのワンフレーズが好きだって嫌なほど聞かされました。知ってるなら、歌いませんか。」


途端、私の目には涙が浮かんだ。


…覚えていてくれたんだ。

胸がじんわりと熱くなった。

あの頃の七宮くんはまだ心の中にいたんだ。

すっかり遠くに行ってしまったと思っていたけど、そうじゃなかったんだ。


「…先輩?どうしたんすか?大丈夫すか?」



私は涙を拭い、立ち上がった。