なんで気付かないの?
「アイせんぱーい!おはようございます!」
「あっ!ソラくんおはよう!」
「今日も可愛いですね!!」
「褒めたって何も出ないよー?」
「じゃぁ、先輩!今日の放課後委員会で!!」
「うん、バイバーイ」
アイ先輩は無邪気な笑顔で俺に手を振っている。
可愛いいいいい!!!!
あの、ふにゃって笑う笑顔!!
最高です。
お陰様で今日も1日頑張れます!!!
俺はスキップしながらルンルンで歩いて1年の階へと向かう。
見ての通り、俺の1日はアイ先輩に挨拶をしてこそ始まる。
登校してまず先に向かうのは、自分の教室ではなく、アイ先輩の教室。
そこで先輩に挨拶をして、毎朝あの笑顔で見送られる。
まさに……最高の朝!!!!!
「はよ。ソラまた先輩の所行ってたのかよ」
皆より少し遅れて教室に入る俺を見て、友達のカイが俺に言った。
もうどこに行っていたのか聞かなくても分かるレベルに、皆俺がどこで何をしていたのかを知っている。
「あたりまえじゃん!俺の朝は先輩への挨拶から始まるんだから」
「あぁー聞いててこっちが恥ずかしくなる」
カイはわざと大袈裟に耳を両手で塞いで揶揄ってくる。
「てか、告白したんだよな?」
「したよ」
数か月前、初めての委員会の時に先輩に一目惚れした。
そして、その日に思わず告白してしまったんだ。
「で?」
「なにも」
そう。何も無い。
むしろ無さすぎる!!!
それが問題。
唯一の問題。
先輩は可愛い。
笑った顔なんて、最高に可愛い。
おまけに優しくて、面倒見がよくて、誰とでも分け隔てなく接してくれる。
だが、超超超超鈍感!!!!!
あの日、初めて告白した時だって──
『先輩、俺好きになっちゃいました』
皆帰った後の教室。
そこで俺は思わず告白してしまったんだ。
『本当に?』
『はい。こんな気持ち初めてだけど……好きです』
『すっごく嬉しい!!!ありがとう』
そして先輩は俺に笑顔を見せ、手を握ってそう言った。
先輩の手は柔らかくて、気持ち良かった事を今でも覚えている。
『じゃあ、俺と……付き合ってくれますか?』
ドキドキしながら言った、人生初めての告白。
『いいよ!!』
『やった!!めちゃくちゃ嬉しいです!!』
あの時の嬉しさは、今まで味わた事がない程。
けれど、その嬉しさは次の瞬間には放心状態に変わっていた。
『私も嬉しい!こんなに委員会を好きになってくれる1年生がいるなんて!!分からない事があったら、何でも言ってね。付き合うから』
俺の気持ちなんて、1ミリたりとも通じていなかったのだ。
その話をソラにした時は、腹を抱えて爆笑された。
それからと言うもの、俺は事あるごとに告白しているが……
今の今まで1度たりとも通じたことがない。
「ソラ、回りくどい言い方してるんじゃねーの?」
回りくどい…そう言われ思いを巡らせてみる。
ある時は、お昼ご飯に誘った時に。
『先輩大好き』
『私も大好き。この学校の焼きそばパンって何でこんなに美味しいんだろうねー』
って、焼きそばパン以下の俺。
ある時は、一緒に帰ろうと誘った時。
『先輩と手繋ぎたいです』
『いいよー。暗いと怖いもんね』
って、ただの暗い所が怖いヤツって思われ。
それじゃいかんと思い……
『俺、こんな風に毎日先輩と帰りたいです』
『だんだんと日が落ちるの遅くなってくるから、明るいうちに帰られるよ』
『いや、だから好きなんです』
『ん?暗い所好きなの?ソラくん言ってる事可笑しい。ふふっ』
って、やっぱり伝わらず。