「颯太…」

「触らないで!!!」


伸ばしかけていたお母さんの手が止まる。


「ごめんね…」


どうして?
どうしてお母さんが謝るの?
何も悪くないじゃん。


「ぼくなんか死んじゃえばよかったんだよね…」

「そんなこと…」

「本当は思ってるんでしょ!?」

「思ってないよ」

「嘘だ!!」

「嘘なんかじゃない」

「……っ、誰も信じられない! みんな大っ嫌いだ! もう出てってよ!!」


嫌な言葉が次々と口から出てくる。

本当はこんなこと思ってないのに。

……全部、嘘。

死んじゃえばよかったのにって少しだけ思ったけど、もし本当にぼくが死んじゃってたら、きっとお母さんもお姉ちゃんも悲しむ。

そんなの絶対に嫌だ。

あの時みたいにお母さんが泣くところを見たくない。



正直、これからどうなるのかすごく怖い。

でも、『怖い』なんて言ったらみんなを困らせちゃう気がして……言えない。


だから、思ってることと反対のことを言っちゃうんだ。



完全に八つ当たりだよ、こんなの。





ぼくは、ぼくが大嫌いだ。