「……た、颯太っ!!」
お母さん…の声?
「そーちゃん!!」
お姉ちゃん……?
ゆっくり目をあけると、お母さんとお姉ちゃんが、僕の顔をのぞき込んでいた。
「っ、颯太!」
「私、先生呼んでくる!」
お姉ちゃんは急いで部屋を出て行った。
「お母さん、ここ…病院?」
「そうよ、颯太は事故に遭って運ばれたの」
お母さんの目は真っ赤に腫れていた。
……お父さんと約束したのに。
お母さんを泣かせないって。
「事故に遭ったって聞いたとき、颯太が死んじゃうかと思って怖かった。また大切な家族を失うかもしれないって思ったの。でも、颯太は生きてる。よかった……本当によかった!」
そう言って、お母さんは泣きながらぼくの頭を優しく撫でてくれた。
「……ごめんなさい」
「颯太が謝ることなんてないのよ」
「ぼくっ……ぼくね、ちゃんとお母さんとの約束守ったよ。でも、トラックが急にきて…」
「わかってる。颯太は悪くないよ。警察の人も捜査してくれてるから、心配しないで。お母さんも、お姉ちゃんも、みんな颯太の味方だよ」
お母さんのあたたかい手がぼくの頬に触れる。
その手に触れたいのに、ぼくの腕は動かない。
気づかなかったけど、お母さんの目にはクマができていた。
……ぼくはもう大丈夫だよって、お母さんを安心させないと。
「お母さん、ぼく、またスタメンに入れるように頑張るからね!」
明るい声で言ったのに、
……あれ?
泣いてる?
どうして?
初めてスタメンに入れたときは、すごく喜んでくれたのに……
そのとき、病室のドアが開いた。