そんな中、新商品をいくつか手に抱えたりんちゃんさんが、山野さんに何かを一生懸命訴えているのが見えた。


どうしたんだろう。
まさか喧嘩?



「在庫表と倉庫の数が合わないんだってば!」

「朝の在庫誰がやったの」

「中ちゃんと高木ちゃん」

「2人?在庫は紛らわしくなるから1人でやれって言ってんのにふざけんなよ」

「それより今はこのことをみんなに知らせなきゃじゃん」

「ったく仕事増やしやがって」

「あたしに言わないでよ!?」

「言ってねーよ」



喧嘩もどきだけどとりあえず喧嘩ではないようで安心した。
でも、在庫が合わないってやばいことだよね?

どういう問題が起こるのかはいまいち分かんないけど、きっと大変なことになるよね。


「倉庫見てくるから、売り場立ってて」

「馬鹿じゃないの!?あんたがいなくなったら誰が回すの!?」

「お前がいたら十分だろ。つり目もいるし、森ちゃんもいるんだから」

「ダメでしょ!あたしが見てくるからあんたはここにいて!」

「お前数数えられんのかよ」

「は!?」

「頭ちっちぇえから脳みそ入ってねぇだろ」

「もう!嫌い!さよなら!」


なんだかんだ仲良いのかもしれないな。

少し前までりんちゃんさんが振られたって話で持ちきりだったから、山野さんに嫌われるようなことをしちゃったんだと思ってたけど、全然カップル感満載だったよ。

こういうのを夫婦漫才って言うのかな?






りんちゃんさんが倉庫の方に消えた後、チラッとだけ見えたんだ。

山野さんの笑顔が。