「あー、相田ちゃんね」


休憩中、つり目さんにさっきのことを話してみた。


「会話のキャッチボールが全く出来なくて。なんて答えればよかったんですか?」


「それでいいと思うよ。相田ちゃんちょっとピンチだから」


ピンチ?何が?


「おつかれ〜」


森さんも休憩室に来て、同じように話した。


「相田ちゃんはね〜。もともと家電だったんだよ〜」


「え!そうなんですか!?」


家電と携帯は他よりも近いからちゃんで呼んでるんだ。
男の人だけど。


「久しぶりに見たけど、やつれてたね〜」

「キツイんだろ。便利屋」

「便利屋に行くの渋ってたしね〜」

「店長の命令だったからどっちにしろ断れないだろ」


相田さんについて、うんうんと話す2人。


「相田ちゃんってこうちゃんと似てるよね」

「あ〜、似てる。優しい所とか、なんでも背負っちゃう所ね〜。そっくり」


え、こうちゃんって。


「航と似てるんですか?」


全然感じなかったけど。


「うん、家電にいた頃の相田ちゃんはこうちゃんそのものだよ」

「あ、だからじゃね!?」


何か閃いたようにつり目さんが大きな声を出した。

「何?」


「家電の鬼がこうちゃんばっかり気にしてたろ!?國分が!!」

「…!!そうだね〜!國分さんも似てると思ってたのかもね!」


イマイチ話の流れが分からないんですけど?


「似てるから、なんなんですか?」


「ゆーちゃん、鈍い!!
相田ちゃんは、便利屋に行ってから別人のように笑わなくなったんだよ!
家電にいた時はニコニコ〜ヘラヘラ〜ってしてて、それでいて仕事はテキパキするような人。そんで、安井の右腕みたいな感じだったんだけど、安井を抜かして便利屋に異動したの!そのせいで安井との関係は絶望的だし……。すごい仕事はできるんだけど、それが仇となって今、鬱っぽいんだよ」


「え、鬱?」


「本人から聞いたわけじゃないから分かんないけど、多分そう。前に携帯でも鬱になってやめた人いたからさ、なんとなく…ね」


つり目さんが話してくれた内容は新入社員の私にとっては結構ハードなもので。

一気に心配になってしまった。


このままいくと航も、相田さんみたいに虚無感しか感じられないような人になる可能性があるってことだよね?

それは絶対嫌。

「どうすれば鬱にならないでやっていけるんですか?」


「そりゃ……過剰に責任感じないこととか、周りを頼るとか…。結局自分次第じゃん?責任感が強ければ強いほど、鬱になりやすいんだよ。だからうちのリーダーは大丈夫だね」


そんな……。
自分次第って。私にはどうすることもできないってこと?