お客さんに捕まりそうになって遅刻するかと焦ったけどなんとか大丈夫だった。


約束の時間5分前に事務所に入るとそこにはすでに私の親がいた。

って。

なんでお父さんまでいるの?



私が入った瞬間に集まる視線。

お母さんとお父さんと、店長代理の冷たい視線。


さっきと変わらない席に座る航に目を移すと電話でひたすら謝っていた。

もしかして私のミスの件?
いや、でも、30分以上前だよ?
違う…よね…?



「それで…今朝の電話の件について…」


お母さんが店長代理に聞いた。


「とりあえず、座れ」


親の前でも命令口調なのはどうかと思うけど。言われた通り店長代理の隣に腰かけた。


久しぶりに見る両親の顔。
特に思うことはない。



「今朝話した通り、お宅の娘さんは全然使えないですよ」


単刀直入にこんなことを言ってしまえるなんて、神経が図太いというかなんというか。


「レジも打てない、接客できない、在庫を数えられない。まさかとは思いますけど、経歴詐称してるんじゃないですか?本当は中卒とか」


すごい馬鹿にした表情で話す店長代理は本当は人間じゃないのかも。なんて。



「…私共もこんなはしたない女が娘だなんてとても信じがたいのですが、ご迷惑をおかけしているようで、申し訳ありません」


お父さんが渋々?嫌々?謝ったけど、はしたない女って何?何のこと?