「気泡ゼロって嘘じゃねーか!!これのどこがゼロだよ!ほら!やってみろよ!!こんなの詐欺だろ!」



スマートフォンの画面を保護するシートを買ったお客さんがすごく怒ってる。


かと言って、スタッフが貼ってあげるのは規約違反だし…。


無茶だって。



「すみません、もう一度やり直してみてくださ…」


「馬鹿か!!何度も貼り直してたら粘着力がなくなってズレるだろ!取り替えろ!」



そんなこと言われても…。
あなたの技術次第なんです。



『ガザガザ……森ちゃ……』


インカムは荒れてて何言ってんのか分かんないし、この人も何言ってんだか。


『ザザザ…森ちゃん、ゆーちゃんのとこ行ってあげて』


ん?
今私の名前言った?

インカムの声は多分山野さん。
あ、事務所から見てるのか。


『ガザガザ…森で〜す。今行きま〜す』



そうして間もなく、小走りで森さんが到着した。


「お客様、どうされました?何か、お手伝いできることはありますか?」


「これ、気泡ゼロって騙されたんだけど」


少し汗ばんだ森さんに画面を見せるお客さん。


「うーん。お客様、こちらの商品、どちらで買われたものですか?」


画面シールを剥がした森さんが険しい顔をした。


「ど、どちらでって、…ここ、ここに決まってんだろ!?」


「レシートなんて持ってたりしますか?」


「レシートは!もらわねぇ主義なんだよ」


明らかに動揺してるけど?


「お客様、こちらの商品、当店では取り扱っておりませんで………こういったガラスタイプの物を置いているんですね。これなら少しお値段張りますけど、気泡はゼロですよ。僕も使ってるんですけどね」


ニコニコと自分のスマホを見せた森さん。
私もガラスのやつ使ってるから気泡は入ってない。


このお客さんのやつはペラペラのだよね。
確かにここには売ってないやつだ。


「んだよ!!帰るからそんなに見るなよ!」


気まずくなったらしいお客さんは大きく舌打ちをして帰って行った。



「あれは100均だね〜。ほら、そこにあるでしょ〜。よくいるんだよ〜大変だったね〜」


のほほんと話す森さんに癒される。


100均の物を持ってくるってどういう神経なの?変な人。