どうせ今日も帰ってこないんでしょ、とお風呂の準備をしていたら玄関が開いた音がした。

釈明の余地あり!?



「…おかえり…奏太…」


「荷物取りに来ただけ。実家に帰る」


……………。


「奏太、ごめんなさい…。しまから全部聞いた…。…覚えてないから偉そうなこと言えないけど……あたしが好きなのは奏太だけ…」



「はいはい。そういうのいいから」


「本当にごめんなさい。前田さんにはなんの感情もないし、奏太と別れるなんて嫌だ」


自分で爆弾まいといてこんなこと言うのは自分勝手だよね。
でも本当に別れたくない。



クローゼットから服を取り出していた奏太が手を止めて小さくため息を吐いた。




「なんで分かんないかな。こんだけ一緒にいるのに、なんにも分かってないよな。お前が一緒にいたいと思ってても俺は無理。
言ったよな?自分が何をしたか分かってないのに謝る奴は嫌いだって。ほんと、いい加減にしてくれ」


怒ってるくせに口調が静かなのはなんでなの。
いつもみたいに怒鳴ってよ。
別れるならあんたを嫌いにさせてよ。



「それは…思い出してないなら謝まらないでほしいってこと…?
人から聞いたをそのまま言うのが許せないの?
だって…覚えてないんだもん…人から聞くしかないじゃん…」


いつもみたいに言ってくれなきゃ何も分からない。

いくら一緒にいたって分からないものはあるよ。


「お願いだから、出て行かないで」


あたしに背を向けて服を取り出す奏太に抱きついて懇願する。


別れるなんて、言わないで。