薬のおかげでさっきのが嘘のように元気になったあたしは退勤後、急いで事務所に行った。


ノック無しに入ったらやっぱり奏太がいて。


尋問を始めようと思う。




「ねぇ」


パソコンで何か作業をしている奏太の横から話しかけたけど、反応はない。

うざい。


「ねぇ、ありがとう!ねぇ!なんで怒ってるの!?」


1文字ずつはっきり耳元で大きな声で言っても険しい顔をするだけで見向きもしない。

ムカつく。



「答えてよ!」


バン!


あたしが机を叩いたら奏太はやっとあたしを見てくれたけど、どちらかというとこれは睨まれてるね。


「見て分からない?仕事中。邪魔。耳障り。消えろ。顔も見たくない」


……は?


なんなの?
全くもって心当たりがないんですけど。


何をそんなに怒ってるわけ?



「お仕事中にすみませんね!でもあんたがなんで怒ってんのか分からないと帰れないんだけど!気になって気になって眠れないんだけど!!」


「…うるさいって言ってんの。
自分が何したかも分かんないようなクソ女と付き合ってたなんて俺史上最悪の黒歴史だわ。これ返すからさっさと消えてくんねぇかな。お前見てるとイライラする。気持ち悪いから早く帰って」


ジャン!と投げられたのはペアで付けてたはずのネックレス。

待って。
あたし何したの?
え、本当に何したの?

今までも喧嘩することはたくさんあったけど、こんなことになったのは今が初めて。



毎日奏太のことばっかり考えてたから配慮が足りなかったとか?

むしろ考えすぎて気持ち悪いとか?


いや、そんなわけないじゃん。
何、あたし意外と冷静?

今にも泣きそうなくらい結構傷付いてるけど、案外平気なんじゃん?


「ご、ごめ…」


「何したか分かんねーのに謝るやつは大っ嫌いだ」


あたしの言葉は何も聞きたくないって、伝わる。
なんでこんなに嫌われたの。

この人しかいないって思ってたのに。



失恋って、こんなに苦しいんだね。