「わかった。妹だろ?」
「ちっ違うよ!それに私、優のいっこ上!」

ウ ソ

「マジで言ってんの」
「ため息吐いたでしょ今」
「タメ口きいちゃったじゃん……」

参った、と首をひねる。期末前の小テストで世にもひどい点数を取り、出された山のような課題。昨日の夜中まで机に向かいっぱなしだった俺の首が悲鳴を上げている。

「そうだぞ、敬語使えっ」

幼げな可愛らしい声で敬語を使えと言われても、実際何の迫力も感じないけれど、何だか穏やかさに欠けたその声に申し訳ない事をしたと思った。

「じゃー真木綿さん。あなたは……」

そう言いかけた時。ポケットに振動を感じ、中から青色に点滅する携帯を取り出した。
着信は、優からだった。

俺は真木綿さんを一見し、電話に出る。

「もしもし」

真木綿さんはそんな俺を見て、相手が優なのかどうなのか確かめるように目線を外さない。電話越しの声は、そんな張り詰めた状況も知らず

「あ、今終わったんだけどもう家着いちゃった?あ、電車ん中?何か買ってこうか?てかママさんが好きなのなんだっけ?」
「あぁもうお前の話疑問符多い!」
「ぶーどしたんだよう、誰かいんの?」

気がつくと、真木綿さんは俺ではなく、熱そうに光る線路を眺めていた。

「いるよ」

こんな近くにいる俺の声さえも届かなそうなその目。やっぱり真木綿さんには優と通ずるものがあると思った。