確か、親とはあまり仲が良ろしくないと言っていたが、父親は随分な金持ちで、高校生の1人暮らしをすんなり認めてくれたらしい。美形で、金持ち。あいつも、もっと人生を楽しみゃいいのになぁと時々思う。
まぁ、価値観なんて人それぞれだけど。

「あ、ねぇ君!なんねんせい?」
「はい?」

1人で校門を抜けると何やら全体的に黒い人が目の前に現れた。よく見ればそれは女の子で、とても可愛らしい顔をしていた。深青の瞳にかかる金色の髪。かぼちゃのようなふんわりスカートに縁取られたレースとフリル。
黒と白とを繰り返すその服装から目を離せないでいると相手は呆れたように手を振った。

「聞いてる?君、もしかして1年生じゃない?」
「あ、1年です」

やっと頭がまともになってきた。この状況の意味はやはりよくわからないけど、この女の子の服装は知っている。ゴシックロリータ、通称ゴスロリ。彼女の爪の先にまで侵食した黒が怪しく光る。

「ユウしってる?岡田優」

ゴスロリ少女は白に近い金髪を肩にかけながら言った。

「岡田優って……岡田優!?」
「え、知ってる?岡田優。」

彼女の瞳は輝き、ブルーの眼球がきらりと瞬いた。俺はというと開いた口が塞がらないという言葉を身をもって感じ、そして思った。


あいつはやっぱり謎なんだ、と。