「早くしないとお店閉まっちゃいますね」
「そうだね、私何がどこにあるかよくわかんないから案内してくれる?」
「俺もそんな詳しくないですけど。この駅そんな、こない……」
「ん?」

固まった俺の視線を追うように真木綿さんも同じ方向を見た。二人の視線の先には双葉女子の生徒がまた一人ぽつん、とこちらを見ている。血の気が引くとはこのことか、頭のほうから一気に温度が下がるのを、俺は確かに感じた。
視線の先の少女はこちらに近づいてくるやいなや、眉を潜めつつ言った。

「あんた、趣味かわったの?それとも、もともと……」
「あ───綾美。落ち着け、な?話せばわかる。きっとわかる」

理解に苦しむ感が思いっきり顔面に出てる綾美の前に立ちふさがり、実に個性的な服装をしていらっしゃる真木綿さんを隠す。

「彼女?」
真木綿さんが首を傾げ、あまりに余計な事をきいてきたので、俺は全力で否定しようと、した。ずいぶんな速さで否定しようと。にも関わらず、綾美の返答の方が2秒以上早かった。

「まさか、幼馴染です。あはは、ありえない」
「目が笑ってないぞ綾美」
「で、あなたこそ……これの彼女じゃないんですか?」
「コレって何だコレって」

まるで物だな、とげんなりしながら真木綿さんを見ると相変わらずのきょとん顔だ。その時、改めてあーやっぱり優に似ている、と思った。ちょっと予想外のことが起きると変な間があくとこ。そっくりだ。

「違う。けど、そうなるかもしれないね」

真木綿さんはきれいに笑って、そんな事を言う。