「ヨシくんおかえしー!」
「おかえしー!」

今年小学1年になったばかりの弟、空(クウ)と、その空の後をテチテチと追いかけてきた幼稚園年長の妹、凛はくたくたで帰ってきたお兄様に対してそう叫ぶ。

「おかえしぃ?何のだよ」
俺は首を傾げながら靴を脱ぎ、部屋へと続く階段を上る。すると階段下で空と凛がバタバタと騒がしく台所へ走りながら言う声が響いた。
「ヨシくんおかえぃーしたよー!」

俺はその発音でやっと理解する。ああ、おかえりって言ったのか。


おかえりね。

おかえり……

ドダダダ、ガシャーン


「空!凛!」

はっと気付いた俺は1段飛ばしで駆け降りた階段の最後を踏み外し、窓に激突した顔面を押さえながら二人を呼ぶ。すると、二人はすぐに台所から走ってやってきた。この時期の子供というのはどうして歩くという事を知らないのだろう、といつも思う。

「ヨシくん何してるのーうるさいー」
「おま、お前。おかえりって覚えたの?」
案外痛いおでこを押さえつつ空にきくと、空は唇を尖らせつつ言った。
「まえから知ってたもん」

そんな可愛くない空と一緒に手を繋いでいた凛を同時に抱きしめる。

けれど空には「暑い」と頭を叩かれ、凛には「痛い」と頬を叩かれた。

本当に、最高に可愛くない。