「じゃ、じゃあ学校は!?」
「あぁ、実はね。こっちで実習があるの。みんなは学校で用意したホテルにいるんだけど、私は優いるしなぁと思って。ありがたいよ、お金浮く」

実習?と俺が首を傾げるとデザイン系の学校に通ってるの。と真木綿が答えた。
職業体験的な感じで、洋服のデザイナーさんのところに一週間お世話になるのだそうだ。そして、彼女の希望したデザイナーさんの事務所がここに近いらしい。

優はぐったりとしながらも最後の力を振り絞るように言った。

「荷物、は?」

真木綿さんはまた得意のきょとん顔で優を見つめた。可愛さの奥深くに眠る、鋼鉄かとも思えるような強さがうかがえる。

えーと……と視線を彷徨わせる真木綿さんの様子に優は期待の念を送りつつ彼女を見つめた。

そして、その期待は見事に打ち破られることになる。

「もう優の家、送っちゃった」

柔らかそうな髪を指に巻きつけて首を傾ける仕草がぶりっこを通り越した美しさで思わず心を奪われそうになる。

その言葉さえ、なければ。