「久しぶり真木綿」
「また優おっきくなった?」

まるで幼馴染の会話を聞いているようだ、とクーラーの効いた車内でぼやーっと考えた。そうか、そうだ。この二人はきっと幼馴染なのだ。

「二人は幼馴染なの?」
「え、違うよ」
「違うのかよ」

俺の左隣で、あっけらかんと答える優に思い切り肩を落とす。違うなら違うで説明してくれよこのマイペースマダムキラーめ

「じゃあさ、なんで俺二人の間なの?」
「なんとなく」
「なんとなくかよ」

俺の右隣で大きな目をぱちくりさせる真木綿さんの背後に果てしなく続くこの先の不安を見た気がした。どうしよう、このひと、優並みのマイペースさだ。

それなら俺が立てばいい話なんじゃないか?確かに電車の席っていうのは三人で話すには適さない作りでも、誰か一人が立ち上がればずいぶんマシになる。うん、そうだ。そうしよう。

「なぁ、俺立つ……」
「でさ、しばらく優んち泊めてほしいんだ」
「えぇ!?」

俺は持ち上げた腰を下ろし、優と共にとんでもない発言をした彼女へと首を向けた。