そしてそれは同時に、俺の逃げ場がなくなったことを意味している。

二人の間には依然として張り詰めた沈黙が流れ、赤に近いオレンジが波打つ脈をさらに急かすようだった。

もしかしたら、彼女の顔は紅いのかもしれない。
もしかしたら、彼の血は噴出しているのかもしれない。

二人を溶かすようなオレンジが、隠しているだけで。冷静に見える彼らこそ、この状況に神経が犯されているのかもしれない。

「優」

先に口を開いたのは真木綿さんだった。
彼女は柔らかく、整った、というべきか。作られたような完璧な顔で笑った。
綺麗な顔立ちをしている人だとは思っていたけど、俺がこの短時間で感じたイメージはもっと無邪気だったように思う。

少し背伸びをしているのか。それとも、これが本当で、今までが演技だったのか。映画のキャストを見るような目で真木綿さんを見つめてしまう。

「真木綿、どしたのその格好」

優は初めて会ったとき俺がしたように、真木綿さんを上から下まで目で追いかけ、呟いた。
真木綿さんは、やっとさっきのように笑って言う。

「おかしい?」
「いや、ううん、つかむしろめちゃくちゃ可愛い」

いやにキラキラとした目で真木綿さんを観察する優もやっと、いつものように笑った。

俺が異常に安心してしまう、あの笑顔で。