「ちょっとミユ、自販機でコーヒー買ってきてくれない?」
「はーい」

6月の過ごしやすい風があたしの髪を撫でる。
ふと、隣の家の窓を眺めた。

…部活かな?
休みの日も忙しそうだもんね。
って、またコウのこと考えてるし。

「あー、やだやだ」

ガランっと大きい音がして出てきた缶コーヒーを拾う。

「だよな!」

聞き覚えのある声。
振り返ると、私服姿のコウが歩いていた。

「あ…」

隣には彼女と思われる可愛らしい女の子。
フリル姿が似合う。
あたしとは違う、フワフワした感じの子。
…彼女、か。

冷たい缶を持つ手に力が入る。
2人はコウの家の中に消えていった。

前まで寂しい時はコウが側にいてくれた。
でも今、彼女ができた彼の優先順位はあたしじゃないのか。
寂しい時、頼れなくなる。
…もう、家にも遊びに行けない。

コウが、離れていく。