「おじゃましまーす」

いつも笑顔で迎えてくれるお母さんが出てこないってことは、コウ1人だ。
靴を脱いでコウのいる2階に上がった。

「入るよー?」
「おー」

う…。
なんか、緊張してるのあたしだけ?
そっと開けると、ベットに横になってマンガを読んでるコウがいた。

「よっ」
「ひ、久しぶり。はい、マンガ」
「おー、さんきゅ」

久しぶりに会ったせいかな。
それとも懐かしい声を聞いたから?
心臓の音がうるさい。

「お前なんも変わってないな!」
「はぁ?少しは変わったでしょ!」
「まぁ、女らしくなったか」
「年頃の女の子だからね〜」

特に迷うことなく、コウの隣に横になった。
枕元にあるマンガを手に取る。
少しの沈黙。

「…なに」

さっきから横からの視線が痛い。

「…お前、可愛いな」
「へ?」

驚いて横を見ると、コウと目が合った。
まつげにかかる、栗色の前髪。
影が作られた瞳は少し潤んであたしを映していて。
小さい頃から綺麗な顔立ちしてたけど、また更にカッコよくなった?
そんなことより、直視されているこの状況はいったい…。

「年頃の女の子が、年頃の男の子の家来て無防備すぎない?」
「なにそれ。小さい頃から一緒に寝てたじゃん」
「幼馴染みだからってなにもしないと思ってる?」
「うん。当たり前」


するとその時

ふわっと洗剤の甘い香りがして
瞬きした途端、天井が白色に変わった。