彼のおいて行った缶ジュースを手に取る。
まだ冷たかった。
見知らぬ他校の女子に、缶ジュースを奢る。

ただ、歌っていただけなのに。

しばらくあっけにとられていた。
ぼーっとしていた。

あれが春希君だったらいいなと心底願った。
もし、あれが春希君だとしたら、
…可愛いエリにぴったりだと、思う。

ジュースを開けるとぷしゅっという爽やかな音がする。それは、お昼から続いていた複雑な気持ちを流してくれた気がした。