30分夢中になって歌った。
声だしも兼ねているから、最初はあまり出なかったけど、もう今は気持ちよく歌える。
風が背中を押してくれているようだ。
腰までの髪の毛が顔にかかる。
楽譜が、飛んで行きそうになる。
ちょうど、歌い終わった時後ろから拍手が聞こえた。この時間に人がいるのは珍しい。
拍手されるなんて、初めてだったから驚いてすぐに振り向いた。

「綺麗な声だね。」

それだけ言って、その人は缶ジュースを置いて
去ろうとした。
黒髪だった、色が白かった。
私は叫んだ。少しで良いから話してみたかった。

「あの…。ありがとうございます!」と。

缶ジュースの人は後ろを向いたまま手をヒラヒラと振って車に乗って行ってしまった。
あれは絶対に三中の制服だ。
白のカッターシャツに黒のズボン。
二中は紺だ。