屋上には誰もいなかった。
「なんで…、」
しゃがみ込んで考えてみる。
きっと、これは、いつかみんなを忘れる自分への罰なんだ。
「嫌だよぉ…」
こんなに痛いなんて。
忘れられる側はこんなにも辛いのか。
茉莉ちゃん達に、こんなに辛い思いをさせてしまうのか。
「ごめんね、ごめんね……」
すると、私に影がかかった。
「なぁにしてんの」
耳馴染みのある声。
いつも、私を助けてくれる声が聞こえた。
「え、は、晴くん……?」
なんで…っ。
みんな忘れたんじゃ…っ!
「教室まできたのに急に違うところ向かってたからついてきたんだけどぉ」
なんで泣いてんの?と問われる。
「なんで、覚えて…」
「いや、あんたのこと知らないけどさ、なんかほっとけなくてねぇ」
昔あったことがあった気がしたから、と言う晴くん。
晴くんも覚えてないということはショックだった。
だけど、それ以上に、傍に誰かがいてくれるだけで安心感があった。
そして、すべてを話した。
嗚咽混じりで聞き取りにくいところもあったかもしれない。
だけど、晴くんは隣に腰を下ろして、真剣に、最後まで聞いてくれた。
「へぇ、そんなことあるんだねぇ」
ほらほらぁ、泣かないの、と微笑んでくれる。
晴くんは見ず知らずの相手にも、優しくしてくれるんだ。
私のこと覚えてないのに、こんなに優しくしてくれるんだ。
「晴くん、ありがとう」