「じゃあね!」
「茉莉ちゃんも頑張ってね」
帰りはやはり晴くんと。
二人で歩いていると、やはり周りの視線が刺さる。
それだけ、晴くんは有名だったのだろう。
「晴くんってモデルの頃どんな風だったの?」
「どうって、俺が中三の頃でしょ」
覚えてないし、と歩きながら答える。
「やっぱり綺麗な人多かった?」
「まぁね、モデルは綺麗じゃないと売れないからねぇ」
「そっか」
真依さんも綺麗だった。
真依さんみたいな人が沢山いたのか。
きっとキラキラしていただろうなぁ。
「でも、もう二度とモデルはやりたくない」
「え、」
「俺は人形じゃないからさ」
前に晴くんが言っていた。
お人形扱いされていた、と。
「ねぇ」
急に立ち止まる晴くん。
不思議に思って私も立ち止まる。
風が私の髪を靡かせる。
「もしさ、俺があんたのこと、彩月のことを好きって言ったらどうなる?」
一瞬時間が止まった気がした。
「きゅ、急にどうしたの?」
茉莉ちゃんも晴くんもどうしたんだろう。
なぜそういうことを聞くのだろう。
晴くんが私のことを好きだったら?
どうなるんだろう。
今のままじゃいられなくなる?
それは分からない。
でも、きっと、私は_______________。
「ちょ、あんた何泣いてんのぉ」
「え、」
気がつけば、涙が零れていた。
本気にしなくていいのにさ、とあたふたする晴くん。
「別に今俺があんたのこと好きってわけじゃないし、そんなに泣くほど考えないでよねぇ」
そう言いながら、ほら泣き止んで、と頭を撫でる晴くん。
「ごめん、変な事考えちゃった」
もしもの話。
もしも晴くんが私のことを好きで、私も晴くんのことを好きだったら。
もし私が晴くんのことを好きでも、きっと晴くんのことを忘れてしまう。
もし私が記憶をなくしたら、晴くんが好きだと言ってくれた私が居なくなる。
だったら、はじめからある程度の距離を保てばいい。
そう考えるから。
だからきっと、“もしも”晴くんが私のことを好きだと言っても、私はそれを、
拒否するだろう。