「彩月!こっち来て!」
「どうしたの?」
体育が終わり教室へ戻る途中、外を眺めていた茉莉ちゃんに呼び止められる。
今回は、男女別だ。
ダンスの授業に入り、専用の部屋に男女全員が入ることが出来なかったから、男子はグラウンドでやるらしい。

「あっち見て」

グラウンドを指さす茉莉ちゃんの先には、まだ授業が終わっていない男の子達。
みんな熱心に踊っている。
その中に…。
「あ、晴くんだ」
「真宮くんは見つけられないね〜」
「一組と二組で距離が離れてるみたい」
「写真撮らなくていーの?」
「あっ!撮らなくちゃ!」
そして、しっかりとピントを合わせ晴くんを捉える。

すると…、
「え…、」
「彩月、どうしたの?」
「ま、茉莉ちゃん!晴くんが手振ってくれた!」
一瞬のことだったけど。
今までそんなことなかったから、ビックリしてしまった。
「振り返したの?」
「ううん、すぐそっぽ向いちゃった」
「なるほどね…」
ニヤリ、と何か意味を含ませたような笑いをする茉莉ちゃん。

「彩月はさ、和久井くんのことどう思ってるの?」
「え?晴くん?」
「うん」

晴くんかぁ。
優しくて頼りがいがあって、とても綺麗で。

「完璧な人?」
「そうじゃなくて、好き?」
「好きって…、友達?」

友達としてはもちろん大好きだ。
晴くんだけじゃなくて、茉莉ちゃんも、翔くんも、クラスのみんなも。
そう伝えると茉莉ちゃんは苦笑した。

「えっと、もしかして聞きたかったのって」
「そう、恋愛的にだよ」

ちょっと勘違いしていたみたいだ。
友達としてじゃなくて、恋愛的に、か。

「恋したことないから、好きとかそういうのわかんないんだぁ」
病気の事もあって、恋どころじゃなかったから。
人に会う機会も少なかったし。
「え、そうなの?」
「茉莉ちゃんはある?」
「一応ね、今はないけど」

まぁ、茉莉ちゃんほど可愛いと、寄ってくる男の人も多いと思う。

「好きってどんな感じだった?」
「えぇ!?彩月、グイグイくるね〜」
「気になっちゃうもん」
「うーん、どんな感じって言われても…」

一緒にいると嬉しくて、他の人といるとモヤモヤして。
ずっと一緒にいたいと思えて。
嫌われたくないと思う。

そう、茉莉ちゃんは言った。

「和久井くんといて楽しい?」
「もちろん!晴くんといると楽しいよ」
「他の人……、例えば私と和久井くんが一緒にいたら怒る?」
茉莉ちゃんと、晴くん?
「怒らないよ、仲いいなぁって」
でも、少しショックかもしれない。
私もみんなと一緒に話したいから。
仲間はずれみたいなのは少し嫌かなぁ。


「ずっと一緒にいたいと思う?」




あれ、これってどこかで……。




「なぁに話してんの」
「よっ、見てた?」

「うわぁっ!は、晴くんと翔くん!」
「和久井くん急に声掛けたらびっくりするからやめてよね!」
なんか顔寄せ会って話してたから何話してんのかなって、とペットボトルの水を飲みながら大きくため息をついた。

「ダンス大変だった?」
「先生が熱血な人でさ〜、俺も瑞生先生が良かったなぁ」
翔くんは相変わらずで。