「小森さんがいてくれて、良かったよ~。
みんな、帰っちゃった後だったから。
ありがとうね。」

真人くんから、感謝されて、ニヤニヤしてしまう。

「いや、良いんだよ~。困った時は、お互い様!
それよりさ、何で、お料理したことないのに、
キッチンに入ろうと思ったの??」

「うっ!それは・・・」

まずいことを聞いてしまったのかと、焦る。

「あっ、余計なこと言っちゃったかな・・・」

「ううん。恥ずかしいんだけどさ、ここのコンクリの壁に『100*100』って書かれてるのが、前から気になってて。なんだか、ミステリアスな感じがしたんだよねー。」

ミステリアス・・・何だか、分かるけど、大げさな感じがして、笑ってしまった。

「あははは!・・・確かに、ミステリアスだよね!
キッチンとホールの壁に大きな穴があるし。
それを隠すように、大きな黒板があるけど、全然隠れてないもんねー。」

そう、穴が空いていて、ホールからキッチンが少し見えてしまう。

「そう、そうなんだよ!・・・でも、その穴から、小森さんが見えるから、嬉しいけど。」

ぼそっと小さい声で、真人くんは言った。

「えっ?」

私は、聞き返した。

「・・・あのさ、今日はもう遅いから、送ってくよ!」

下を向きながら、大きな声で照れくさそうに言った。

「ほんとに!ありがとう!!」

もう、嬉しくて、天にも昇る気持ちになった。