「アレンジメントっていうのは、どういうものなの?」

「バスケットなんかにスポンジを入れて、それに花を挿していく。花束に比べて世話が楽だからお見舞いには人気だよ」

「じゃあそれ一つお願いします。全部お任せしちゃっていいの?」

「うん。うちはお見舞いに不適切な花はおいていないから、安心してくれていいよ」


 僕はそう話しながら、向日葵を何本か手に取った。向日葵は明るくて元気が出る花だから、お見舞いとしても人気が高い。倉本のイメージにもぴったりだし、花選びに迷うことはなかった。

 バスケットの中に水をしみ込ませたスポンジを入れ、適度な長さに切った花を挿していく。

 うちの店は作る過程を見てもらうために、お客さんと向かい合って作業をする。それを今まで何とも思っていなかったけど、今日は違う。


 知り合いがお客さんとして来るなんて初めてだし、相手は今日初めて話したばかりの人気者だ。学校のアイドル的存在だといっても過言じゃない。

 そんな彼女が、僕の一挙手一投足を見ていると思うと気が気じゃない。全身に力が入って、額が汗でにじんでいく。