なんとか言葉を絞り出したけれど、かなり不愛想になってしまった。倉本はクラスメイトである以前にお客さんだというのに、にこやかに接客するどころか目をみて話すこともできない。

 こんなことなら、母さんに「店番くらい一人でできる」って言わなければよかった。


「実は、お見舞いにお花を持っていきたいの。でも、どんなお花がいいのか全く分からなくて。松波くんに選んでもらえたら助かるな」

「……生花だったら、アレンジメントがいい。世話が簡単だから。それか、枯れなくて世話が不要なプリザーブドフラワーがいいよ」


 倉本が花を買いに来た理由はなんとなく分かっていた。倉本だけじゃなく、うちにくる大半のお客さんも同じだからだ。

 うちの花屋は市民病院の近くにあるため、大半のお客さんはお見舞い用に買っていく。その関係でお見舞いに適さない花はおかなくなり、代わりにプリザーブドフラワーを扱うようになった。

 お客さんはいつも悲しそうな顔をしていて、その表情を見るたびに暗い気持ちになる。

 僕が倉本に「うちは素敵じゃない」と言ったのは決して謙遜しているわけではなく、こういう理由があるからだ。