「つーか、あんた」


レイが霊の方を見て言い放った(駄洒落じゃないよ!)。

その女の霊は相変わらず充血した目でこっちを見ている。


「……ゆるせない、ユルセナイユルセナイユルセナイ!!!!!」

「めんどくせぇ……」


狂ったようにユルセナイと繰り返し叫ぶ女の霊。


ちっ、とレイは舌打ちをした。

それはどう見ても、小学校高学年くらいの容姿のレイには似つかわない仕草だった。


この子、一体何者なんだろう。



あたしが疑問に思っている間に、誰かの駆けつけてくる足音がした。


すばやく振り返ると、神代君が息をきらして走ってきていた。

こんなに慌てている彼の姿を、あたしは初めて見た。


来てくれたという安堵感に包まれて、無意識に顔が綻ぶ。


「美加……っ」

「大丈夫、何もされてないよ」


ほっとした顔を見せる神代君に、レイが言い放つ。


「ハル。そいつ連れて出てろ」


神代君は一度小さく頷いて、あたしの手をひいた。


「え?レ、レイ……」

「早く行けよ。俺なら問題ないから」


それでもあたしは不安そうな顔を向ける。

それに対して、およそ年相応じゃない妙に大人びた笑みを浮かべながらレイは言った。


かろうじて聞き取れるくらいの、小さな声で。



「……そいつのこと、絶対嫌いになんなよ」



レイは、神代君を指差していた。


あたしは訳がわからないままに数回頷いて、神代君に手を引かれて出口を出た。