「行こう」
平然とした顔でそう言う神代君を、あたしは目を見開いて見つめた。
行こうって、お化け屋敷に!?
そんなまさに幽霊の出そうな場所に!?
「や、やだ!」
「どーして」
「だって本物いそうじゃん、見えちゃうじゃん!」
「だいじょぶ」
だいじょぶじゃないって。
何でわざわざそんなとこに行きたがるの、ねえ!
「レイも何か言ってよ……って、あれ」
ずっとついてきていたかと思っていたレイが、忽然と姿を消している。
こんなときに限って、どこへ……!?
「美加」
少し怒気を含んだような声に振り返れば、神代君の仏頂面。
えっ。
「レイなんかいーから」
「ごごごめんなさい神代君」
「春也」
「は、春也!」
ぐいぐと手を引っぱられる。
どうやらご機嫌を損ねてしまったご様子。
あたしは泣きそうになりながらも抵抗できず、引っぱられるがままにお化け屋敷まで強制連行された。
他の乗り物とは少し離れた薄暗いところに、そのお化け屋敷はある。
到着して早々、あたしは神代君の顔をゆっくりと見上げた。
「ほんとに入るの……?」
「うん」
迷いなく頷く彼。
何でこんなに頑固なの!