「お疲れ様です!焼酎です」

席に着くなりドンッと勢い良く焼酎のボトルを置く綾美、恐る恐る氷と水を置く高橋さん。

「綾美ちゃん、お疲れ様ね」
「一緒に飲もうよ~」
「綾美ちゃん、作ってくれる?」

「作りません!」

綾美は華があり、目立つから社内で知らない人は居ないと思う。

見る限り、この人達、クジ引きで決めた席順とか関係なく集まって座ってるから、この席の人達は可愛そうだな・・・と思いながら、少し離れている場所にいると、

「綾美ちゃん、怖いなぁ。ゆりちゃん隠れてないでこっちおいで!」
「綾美ちゃんより秋葉ちゃんの方が優しいよなぁ。俺、好みなんだよなぁ」
と手招きされた。

「ゆりちゃんじゃなくて、ゆかりね。名前間違えたから駄目です!それに私は彼氏にしか優しくしないって決めてるんです!」

売り言葉に買い言葉で綾美が受け答えしていくと、

「誰なんだ、そいつは。社内の奴なの?」
「ここに居るなら連れておいで。品定めするから」

と総務部の上司達が騒ぎ立てる。

話を聞いていた高橋さんは顔が真っ赤になっている。

クリスマスに食事してから"お試し期間"として仮の彼氏彼女の関係だ、と綾美が言っていた。

「居るじゃないですか、そこに!」

綾美は隠す事はせずに指を指して答えたのだが、上司達は酔っていて指の指す方向など見てはいない。

「まさか、日下部か?」
「日下部なら安泰じゃない。合格!」

上司達が盛り上がる中、キッパリと

「違います、高橋君です」

と綾美は言った。

一瞬、静かになった上司達だが、再び歓声が上がる。

「高橋、俺達の綾美ちゃんに何やってんだよ!」
「お前は来年からは残業倍増だ」

総務部のマスコット的存在な高橋さんは皆からいじられている。

そんな場面を見ながら私も笑っていたら、日下部さんと目が合った。