「…日下部さん、やっぱり、ゆかりの事が好きなんじゃない?高橋君の話を聞いていても、日下部さんって、ゆかりの事ばかり話しているみたいだし…」

先日の日下部さんとの出来事をサラッと要点だけ伝えた。

「それよりも、会議室でのキスってドキドキしちゃうね。日下部さんて大胆だなぁ。社内恋愛って素敵…!」

綾美は興奮してテンションが高いけれど、日下部さんとは社内恋愛でも何でもない。

同期→上司と部下の関係→キスはされたけれども上司と部下の関係は変わらず。

「ゆかり、知ってた?日下部さんて来る者拒まずな噂はあるけど、本当は誰とも付き合ってなかったみたいだよ。女の子達は告白しても振られてばっかりで、見栄張って付き合ってるとか言ってただけみたいだよ。

誰にも手出ししてないんだから、日下部さんは本気でゆかりが好きなんだって!」

5年間、何にもなかったのだから、今更好きって言われても実感湧かない。

しかし5年間もの間、一番近くにいつも居たのは日下部さんなのが現実。

私自身は日下部さんのどこを見てきたのだろう?

「私は香坂君が好きなんだもん…」

「ゆかりは日下部さんが押して来たら、堕ちるよね、絶対。だって、嫌がってるようには見えないもん。あ、二股はダメだからね!ゆかりに限ってそんな事はしないとは思うけど!」

バーコーナーでカクテルを貰った綾美は上機嫌で飲み干す。