「綾美!」

「今から私もゆかりの所に行こうと思ってたところだよ」

心底疲れる異星界な様な場所から抜け出して、キョロキョロと周りを見渡し探していたら、前から手を振る綾美を発見。

「私の隣が日下部さんなんだよ、嫌だよ。助けて!しかもね、女子社員が日下部さんファンみたいな人ばっかりで!」

綾美を見つけたので直ぐに駆け寄り、綾美の両腕を掴みながら泣き言を話す。

「分かった、分かった!落ち着いて。料理を取りに行こうよ」

「落ち着いていられないよ、本当に無理なのっ」

綾美の視線が泳いでいる事に気付かず、私は中断せずに話を続けていたら後ろには鬼畜なS部長が立っていた。

「悪かったな、隣の席で」

聞き覚えのある声は、間違えなくあの人。

いつも突然現れるから心臓に悪い。

「ぎゃあっ!何で居るの?」

「ギャーっとは何だよ。マーケティング本部長のところに呼ばれているから、ここが通り道なだけだ。ストーカー呼ばわりしやがって」

「…してません、ごめんなさいぃ」

通り道なだけなら早く過ぎ去って下さい。

私は綾美の背中の後ろに隠れて謝った。

「小動物みたいに怯えてるけど、何に怯えてんの?」

日下部さんは私を見下す様にクスクスと笑いながら、人だまりの中に消えた。

私が日下部さんとわだかまりがあるのと怖がっている事が分かっていて、わざと言ったんだ。

「やっぱり、日下部さんと何かあったんでしょ?食べながら話そ。美味しそうなの沢山あるよ」

綾美はニコリと笑って私の手を引き、ブッフェ台へと誘導する。

私はいつも綾美の笑顔に救われてるんだ。

誰にも言わずに日下部さんとの事を隠しておこうと思っていたけれど、抱え込んでいるのも限界なんだと思う。

綾美ならきっと受け止めてくれるだろう───・・・・・・