教室のドアが開く度に、春馬が来たんじゃないかってそっちの方を向いてしまう。
会いたくない、けど会いたい。
矛盾してるね。
またドアが開く音。
あ、今度こそ春馬だ。
「おはよ。」
私の席の隣を通った時、いつもの様に挨拶をした。
できるだけいつも通りを装う。
「ん、おはよ。」
目は合わなかったものの、声はいつも通りだ。
鞄を置いたらそのまま机に寝そべる。
眠いのかな。
昨日も夜更かししてたのかな。
大丈夫、いつも通り。
……いつも通りだよね?
なんか、分かんなくなってきちゃった。
「ののかぁ!」
後ろからいきなり抱きつかれ、危うく手に持っていた消しゴムを落とすところだった。
「あ、おはよ、愛梨。」
「おはよ!もぉ、聞きたいことあり過ぎるんだけど。」
いつにもまして元気だな。
私の肩を掴んでこれでもかというぐらい揺らした。
「ちょ、酔う。声でかい。」
「もー、後でたっぷり聴かせてもらうからな!」
隠しきれてないニヤニヤした口元のまま、愛梨は自分の席に着く。
大輝には親友の愛梨にだけは本当の事を言う許可をもらった。
大輝も、春馬にはもう言ったのかなぁ。