「いつから付き合ってんの?」
別にどうでもいいけど、って感じを装いつつ聞いてみた。
31日より前じゃないよな?
「3月31日。」
その日かよ。
あの抱きしめてた時かな。
もしかしたら全部が本当で、好きってのはフライングの嘘で、あの後の用事があるってのも事実で、なんならその後大輝と会う約束でもしてたのかもしれない。
あの反応は、きっと気の所為だ。
俺の考え過ぎた。
「…おめでと。」
俺は大輝の顔を見ることができなかった。
相手が乃々香じゃなかったら、この気持ちに気づかなかったら、もっと心を込めて言えてたと思う。
親友の嬉しい出来事に素直に喜べないなんて嫌な奴だな。
だからせめて、この気持ちだけは気づかなかったことにしよう。
校舎に入ったらとても騒がしかった。
至る所で人が集まり、いつもより高い声のトーンで話に花を咲かせている。
普段は好きじゃないのに、今の俺にはそれがどうも落ち着いた。
「お前はいいの?」
大輝の問いの意味に勘付いたけど、俺は知らないふりをする。
「なにが?」
笑いながら返した。
今は、一刻でも早く大輝と離れたかった。
いろんな感情がごちゃ混ぜになって、いつも通りでいられる自信がない。
「じゃあな。」
大輝の教室に差し掛かった時、逃げる様に俺も教室に入った。
あ、乃々香だ。