所詮、きっかけは思ってるより単純で、こんな些細な事で自覚をするとは思わなかった。
あの後、教室に戻った俺は、準備が終わっても暫くは教室から出なかった。
乃々香達が居なくなったのを確認して、一人で家路へと歩いた。
その間もずっと、乃々香の「好き」って言葉が頭の中で何度もリピートされる。
それと同時にあの光景が浮かんで、頭の中がゴチャゴチャになった。
今更気付くとか遅いだろ。
まだ自信の持てない恋心が胸の中で密かに息をする。
正直今まで誰にも、そういう感情を持った事がない。
そもそも乃々香以外の女子とは全然話さねぇし。
だからどうすればいいのか分からない。
ただ、友達でも…恋人でも、どんな形であれ乃々香に傍にいてほしいって思うのは確かだ。
他の人じゃなくて、俺の隣に。
それだけは嘘じゃないから。
いろんな感情が心で動き回る。
今更言葉を撤回して、やっぱ俺も好きだなんて言える訳ない、言っていい筈もない。
そもそも今まで通り接することが出来るのか?
大きな溜息を吐く。
家に着いて、自室のベッドに転がって目を閉じれば、乃々香の笑顔が頭に浮かんだ。