「春馬ー。」
「んー?」
学校が終わって帰る準備をしていた時、大輝に話し掛けられた。
「久々ゲームしようぜ。」
久々といっても春休み以来。
んー、一ヶ月ぐらい経つから久々なのかな。
「いいけど、いつ?」
「土日のどっちか。」
悲しいことにどっちも暇だわ。
「じゃあ明日。」
「おけ。」
って大輝と話したのが昨日。
「何する。」
「まずはこれだろ。」
並んだカセットの中から大輝が取り出したのは、俺的には今一番流行ってると思われる通称虹7っていうアクションゲー。
「おけ。」
オンラインで決められた範囲を移動しつつ敵を倒していくって感じのやつ。
ゲームをセットして、いつも通りやっていく。
何回かやって、休憩にお菓子を食べる。
「…あのさ。」
その時大輝が躊躇いがちに声を発した。
「んー?」
口にお菓子を含みながら返事をする。
「お前こういうの聞かれるの嫌いって分かってんだけどさ…。」
「なんだよ。」
次の大輝の言葉に嫌な予感がした。
「…好きな人いんの?あー、気になる人でもいい。なんか、そんな感じの人。」
嫌な予感は的中で、胸が痛くなる。
「…べつに、いないよ。」
言えるわけない。
いや、そもそもそんな感情なんてないんだ。
「ほんまに?」
俺の答えるまでの間に不信感を抱いたのか、再度聞き返してきた。
「いねぇって。そういうの興味ないし。」
だからきっぱり答える。
「俺は、…お前が乃々香のこと気になってんのかなって…。」
この前も友達に言われたけど、俺ってそんなにわかりやすいのかな。
もしかしたら乃々香にもバレてる?
「それはやばいだろ。友達の彼女なんて好きになんねーよ。」
「いや、付き合う前にもしかしたらなって思ってさ。」
今更そんな事言うなよ。
「だったらなんだよ。もしそうだったらお前はどうすんの?別れて俺に譲るか?」
「そういうわけじゃねーよ。」
「じゃあ何だよ。」
「自分では気づいてないのかも知んねーけどさ、お前、乃々香だけは特別だよ。一緒にいるとこ見るとさ、俺も見たことないような表情するし。」
「知らねーよ。てかどうでもいいだろ。お前と乃々香のことじゃん。俺が仮に好きだとしても、乃々香はお前が好きで選んだんだし。」
そう言ったら、大輝は傷ついた顔をした。
意味わかんね。
大輝は何も言わずゲームスタートのボタンを押した。
無言のまま進めていく。
それで、吐き出すように
「…乃々香は別に、俺を好きじゃねーよ。」
また顔を歪めた。