「二人って仲良んだね。」
英語の単語帳を見てたら右後ろから聞こえた蛯原さんの声。
春馬がなんて答えるのかなって思い、また聞き耳を立てた。
「俺と乃々香?」
「うん。春馬くんって女子と全然喋んないけど、乃々香ちゃんとはよく喋るよね。」
「まぁな、付き合い長いし。」
確か小四の時だったかな。
その頃も春馬は女子と全然話してなかったけど、隣の席になって私が話し掛けたのが最初だったはず。
「それに、他の人は名前で呼ばないよね。」
「……まぁ。」
小学生の頃は割と男子も女子を名前で呼んでたからなぁ。
その延長みたいなもんだ。
「付き合ってるの?」
「仲良いからってすぐそういうのやめろ。」
低い声。
なんて答えるんだろうと思う前に、春馬はそう言った。
まるで嫌だって言われてるみたいで余計胸が痛む。
だめだ、こういう時、誰かの優しさに縋りたくなる。
無意識に大輝を探した。
見つけたらすぐに目があって、優しい笑顔を浮かべる。
何でもいいから話したくなって、大輝の席へ行った。